いつも通りの会話に、いつも通りの雰囲気。
ただ違ったのは。
普通でない普通の毎日
機械鎧の整備が終わり、いつもみたいにウィンリィが小言を言って、エドが余計な事を言って、
まるで子犬のじゃれあいみたいな喧嘩が始まっていた。
アルはデンの散歩に出かけ、ばっちゃんは買い出し中。
「本当のことだろ。小言に気を取られてっからすっころぶんだ。鈍いやつ。」
「な!ううううるさいわねっ///!ちょっと考え事してたのよ!!」
ウィンリィは右足を痛めていた。
そのため今日はびっこをひいて歩いていたのだ。
その日は空がきれいだった。
澄んだ青空には雲一つ無く、太陽は優しい光を放っていた。
だから空を見上げて歩き、石に躓いた拍子に足を挫いたのだ。
(我ながら子供みたいな事をしちゃったわ…)
ウィンリィはその時の自分の間抜けな光景を思い出し、恥ずかしさで顔を赤らめた。
「ほらっ!終わったわよ!!」
ウィンリィは誤魔化すためにエドの頭をパシッと叩いた。
「てっ!八つ当たりすんなよっ」
はいはい、なんて適当にあしらって工具を片そうとしたとき、足が痛んだ。
「った…!」
ウィンリィが痛みに顔を歪ませたと同時に、視界もぐらりと曲がった。
(や、やばいまた…っ)
ウィンリィは衝撃を覚悟してギュッと眼を瞑ったが、いつまでも予想していた衝撃は訪れ無かった。
(………あれ?)
そっとウィンリィが眼を開くと、ウィンリィは背中に腕を回され、抱きかかえられてるような体勢となっていた。
ウィンリィが倒れる前にエドが素早く回り込み、間一髪支える事に成功したのだ。
だが、非常にまずい状況だった。
((顔、近い///!!))
2人が同時に思った事だった。
それもそのはず、2人の顔の距離は10センチも満たなかっただろう。
エドはゆっくり手を離し、ウィンリィを立たせた。
「…あ、ありがと。エド」
「お、おぅ…」
(やだやだ、どうしよう!何かスッゴい恥ずかしぃ!!ていうか、こいつこんなに力強かったっけ)
(うわ、何だこいつの軽さは!?ちゃんと物食ってんのか??ていうかなんかぐにゃぐにゃして…)
何故かお互いに気まずい空気が流れた。
耐えきれずそんな状況を打破したのはウィンリィだった。
「…あ、あのさ!コ、コーヒー飲む?」
「おぁ?あ、あぁ!頼む」
ウィンリィはそそくさとキッチンに向かい、カップに挽いたばかりのコーヒーを入れ、熱湯を注いだ。
(あいつ、あんなに力強かったんだなぁ…昔は体付きも力もそんなに変わんなかったのに)
「はい、エド」
「…サンキュー」
エドは、コーヒーを受け取りながら、何だか落ち着かない気分だった。
(何でオレ、ウィンリィ相手にこんな緊張してんだろ…)
エドはウィンリィからカップを受け取ろうと手を伸ばす。
その時、ウィンリィのカップを持つ指とエドの指がちょん、と触れた。
「狽っ//」
「え!?きゃあっ」
エドが急に手を引っ込めたせいで、カップはウィンリィの手からするりと離れ、エドのズボンの上に落下した。
「ぅあっちぃーーー!!?」
「バ、バカっ!何やってんのよぉ!!」
コーヒーはエドのズボンにどんどん染み込み、熱さが肌にへばりつく。
このままでは火傷してしまう事は確実だった。
「早く脱ぎなさい!!」
「は!?ってちょ、ちょっと待て、ウィンリィ!!」
ウィンリィはエドのズボンに手をかけたが、当然エドは抵抗した。
「ななな何考えてやがる///!」
「いいって!自分で…」
「うるさいっ(怒)!!」
ウィンリィは素早くズボンを脱がすと、自分の足の痛みも忘れ、パンツ一丁姿のエドを浴室まで引っ張って行き、
下半身にシャワーで冷水をかけた。
「つ、冷てぇ〜っ;;」
「はぁ、これでよしっ…と」
ウィンリィはほっとして床に座り込んだ。
「…も、もういいだろ」
「あ、うん…」
我に帰ったウィンリィは目のやり場に困った。
普段見慣れているとはいえ、パンツ一丁姿になった(正確にはした)幼なじみを風呂に連れてきた挙げ句、
シャワーをかけてずぶ濡れにするなんて、急とはいえ何だかまずい感じがした。
何より、エドがずっと黙っているのが一層自分はやってはいけないことをしたという気にさせた。
一応エドは男の子で、コーヒーをぶっかけたのはデリケートな場所なわけで。 …
(て、何考えてんのよ私!変態だわこれじゃっ///)
顔に熱があがっていくのを自覚しながら、ウィンリィは顔をブンブンと横にふった。
一方エドは、未だに下半身に冷水をかけていた。
(ま、まずい…)
なんだかエドもいけないものを見ているような気がした。
水しぶきが体にかかり濡れた作業着を着ながら真っ赤になっているウィンリィは、どこか露めかしさがあった。
冷水を浴びているはずなのに、体は熱くなっていくばかりで。
「…エ、ド…?」
ウィンリィが恐る恐るとエドの顔を覗き込む。
(…なんつう無防備なやつ…)
ウィンリィの顔に影がかかった。
「…?え、エド?なに…?」
「…ウィンリィ…」
いつになく真剣な表情と自分を呼ぶ声音に、ウィンリィはドキリとした。
(なな何何何!?や、近…)
ウィンリィは耐えられなくなってぎゅっと目を瞑った。
二人は徐々に近付いていった…
「…何やってんの二人とも?」
「「!!?」」
アルは訝しげに風呂場の外から2人を見た。
「おおおお帰りなさいっアル」
「…ア、アルいつからそこに…っ」
「えーと、二人してずぶ濡れになって座ってるとこからだけど…」
散歩から帰ってきて返事がないからどこかにいるのかと思って探してたんだ。
とアルは説明を加えた。
「そ、そうか」
真っ赤になりながら明らかに焦る二人を見て、アルはピンと来た。
「…なんか、お邪魔だったみたい?」
にやにやしながら聞いてくるアル。
アルの言葉を聞いて、ドカンと爆発しそうなくらい二人は真っ赤になった。
「ち、違うっ!これは火傷しそうななって」
「そそそそうよっ!このバカがコーヒーこぼしちゃったから冷やしてただけで…」
「て、てめぇウィンリィ!バカとはなんだバカとは!お前がいきなり手を離すからだろうがっ」
「私のせいにしないでよっバカ豆!!」
「豆じゃねぇーーーっ!!」
自分が見たさっきまでのちょっと良い雰囲気はどこかへ吹っ飛んでしまったようで、
またいつも通りに戻っていた二人にアルは少し呆れた。
だが、当の二人の心中はいつもと少し違っていて。
(あ、危ねぇ…なんか意識吹っ飛んでなかったかオレ…)
(何だったのかしらさっきの…ま、まさかそんな、ね)
ふと目があって、お互いに、あ、あはは、と誤魔化すように笑った。
(…青春、なのかな?)
アルは端からみたら不気味な二人を無理やりそう思うことにした。
*****
いつの間にか変化している幼なじみにドギマギ。
『普通でない普通の毎日』 title by---
blue crescent